小川糸おすすめ小説 3選

おすすめ作品

食べることは生きること『食堂かたつむり』

おいしくて、いとおしい。
同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。 山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。

何も持たない身軽さを活かし、
前向きに自分の夢をかなえようとする
主人公に元気をもらえます!

声が出ないから、
コミュニケーションは難しいかと
思ってましたが、
周りに助けられながら、
食堂を作り上げ、料理する日々に温かいものがこみ上げてきました。

主人公が作る料理は、
お客さんに対して、食材に対してとっても真摯です!

メニューの考案、食材選び、下準備、仕上げ。
お客様への振る舞い、店内の環境。
どの行為にもお客様を思いやる
心がこもっているのを感じます。

あくまで料理とお客様がメインで、
他に余計なものが存在しない
食堂の雰囲気が好きです。
実際にあるなら行ってみたいです!

一番印象に残った場面は、
村に住む年中喪服のお妾さんに
料理を振る舞うところです。

年配者に優しい繊細な料理ではなく、
心も体も元気になるような
新鮮で刺激的なボリュームある
コース料理を提供します。
時間をかけてゆっくり少しずつ、
細い体にエネルギーを補充していくような
食べる姿は、生きるって食べることだ、
としみじみ思いました。

孤独でも強く生きていく『とわの庭』

盲目の女の子とわは、大好きな母と二人暮らし。母が言葉や物語を、香り豊かな庭の植物たちが四季の移ろいを、黒歌鳥の合唱団が朝の訪れを教えてくれた。でもある日、母がいなくなり……。それから何年、何十年経っただろう。帰らぬ母を待ち、壮絶な孤独の闇に耐えたとわは、初めて家の扉を開けて新たな人生を歩き出す。清潔な生活、おいしいご飯、沢山の本、大切な友人、一夏の恋、そしてあの家の庭の植物や鳥たち。盲導犬ジョイと切り拓いた新たな世界は、眩い光とかけがえのない愛に満ちていた。涙と生きる力が溢れ出す、感動の長編小説。

冒頭からどこか怪しい、
不穏な感じがします。
お伽話の導入のようで、
これから悪いことが起こる
予感がするような・・・。

目が見えず、家の中で母しか知らない
主人公・とわ。

彼女に寄り添い続けたのが物語です。
母親が読み聞かせてくれたお話の数々が、
彼女に残ってよかったと思います。

物語がもたらした想像して考える力。
目が見えず、過酷な環境でも
彼女は世界は美しいと言います。

そんな世界を慈しむような人であれたなら、
と思ってしまうほど
とわの人間性が素晴らしいです。

母を、人を、世界を、
恨み、荒んでもおかしくないのに。
事実をただ受け入れ、
いつでも自分にできることを
できるだけ頑張る。
そんなことができる強い主人公です。

どんな苦境にあっても死ぬことを選択しない。
外の植物の香り。
虫の音。
ピアノの音。
世界に感覚を研ぎ澄ませ、愛そうとします。

視点はずっと主人公です。
子どものころから成長していく
とわに深く感情移入してしまい、
思わず泣いてしまいました。

新しい家族の形『にじいろガーデン』

夫との関係に苦しむ泉はある日、電車のホームで思い悩む女子高生と知り合う。互いの悩みを相談するうち二人は惹かれ合い、共に暮らす決意をする──。新たな家族の形と幸せを問う感動長編。

レズビアンで母二人、息子一人、娘一人な家庭。
社会の偏見と向き合う場面もあるけど、
メインは家族愛のお話です。

家族がそれぞれ思いあっています。
時にすれ違っても家族、
「オハナ」が大事で
支えあってる様子があたたかいです。

プロローグと4章で構成され、
各章は家族それぞれの視点で描かれています。

時間のズレがあって、その時のことは
当人視点でしかわからない。
読者が最後まで読んでも
作中時間に隙間があり、
全体像は読者の想像で補うところがあります。

この家族が世間から
どう見られていたかはわかりません。
外より内側に向いてて
家族を思う場面が多いです。

家族の在り方、幸せに正解ってないな
と考えさせてくれる作品でした。

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