当記事はマポロ3号著
『PPPPPP』の書評です。
音楽漫画の主人公たちは、
コンクールで優勝する。
有名になる。
または自己表現などを目的として
音楽活動をしていることが多いと思います。
でも、本主人公は凡才だけど
天才兄弟たちと再び一緒に
演奏することを願い、
ピアノを弾きます。
「ファンタジー」を見せるほどの
演奏シーンが素敵でした!
『PPPPPP』とは?
『PPPPPP』あらすじ
ピアノを弾くことが大好きな7つ子は、一人を除いてみんな天才だった。
月日が経ち、兄弟でたった一人の
凡才・ラッキーは、余命2年の母親とピアニストになる約束をするが!?
ピアノを巡る奇跡の物語、開演。
『PPPPPP』感想・レビュー
Point1.音楽
いい音楽とはなんでしょうか?
楽譜通りに弾いて、
作曲家の意図を忠実に表現する。
作曲家のための音楽。
客の望みに応え、愉しませる。
聴衆のための音楽。
解釈を広げ、自己表現する。
自分のための音楽。
賞をとるだけが音楽の目的ではなく、
絶対的な「いい音楽」なんてないんだな
と思いました。
7つ子の長女・ミーミンは2種類の
「ファンタジー」を持っています。
一つは、彼女の独自の解釈で、
自由に弾くピアノ。
妖精たちが出現します。
もう一つは、何も考えずにする演奏。
美しい木々が現れ、
その隙間から曲の本質が見え隠れします。
ミーミン自身は妖精の演奏を愛しているが、
皆から評価されるのは木々の演奏です。
自由で自分は好き。でも受けが悪い演奏。
皆の受けがいいけど、自分はつまらない演奏。
どちら音楽を目指すべき?
誰に認められても、
自分が納得しない演奏は
そのうち破綻するような気がします。
音楽家が表現者であるなら
自分が好きな音楽ができるといいですよね。
活躍の場も現代ではいろいろあるので、
リサイタルなどやってほしいです!
どうして不自由なんか使ってるのかわからない
そんなものより
あなたのそのお姫様のような魅力の方が
好きなものを守るための強大な力だと思うのに
Point2.天才
「天才とはなにか?」
そんなことをずっと問いかけられている
ような作品でした。
天才もいろんな天才がいて、
まずはその「才」を自分がわかっているか。
そして愛してあげられるかどうかで
「化け」られるかがわかるそうです。
才能は一概に比べられるものではないし、
突出しすぎて認識できなかったり
するかもしれない。
でも、人に褒められたり、
すごいと言われたことを
まず愛することから
何者かになれるのかもしれませんね。
「キミにも人生はあるでしょ?
色々な出来事が出会いが環境があるでしょ?
それらから特別な才をもらえた凡才は
天才にも匹敵する何かに化ける」
Point3.優しさ
優しさもまたエゴだよ
他者を利用するタイプのエゴ
場合によっては一番タチの悪いエゴ
口を無理矢理開けられて大嫌いなものを
ニコニコの笑顔でぶち込まれ続けるような
「人に優しくしなさい」と幼いころから
言われて育ってきました。
自分がされてうれしいことを人にしてあげる。
されていやだったことはしてはいけない。
きっと一度は言われたことがあると思います。
改めて、優しいってなんでしょう。
辞書で確認すると下記のように記載されています。
[二]姿や言語、振舞いなどに、こまやかな心づかいや、
たしなみの深さなどが感じられるさま。
また、それを優れたものとして評価すること。
(中略)
③ 本能・衝動などに心をまかせず、己を抑えて、
自分の立場にふさわしくふるまう思慮あるさまに対して、
他人が心に感じて用いるほめことば。
多く、優位にある者から用いる。
立派である。感心である。殊勝である。けなげである。
④ 他人に対して、心づかいがこまやかなさま。
思いやりがある。情深い。暖かい心配りがある。
⑤ 人の態度・性格などが、従順である。
おとなしい。温和である。すなおでものやわらかである。(『日本国語大辞典』より引用)
「優しい人」といわれるとき、
④が該当するでしょう。
思いやりや心配りがある。
でも、本心で思っていなくても
そういわれる行動をとることはできます。
形式美のような、やって当然なような、
マナーになってしまっていることをするのに
心の機微は必要なのでしょうか。
マナー本を読んでそれに倣っているだけ、
皆がやっているから真似しているだけ。
その人のことを思っているより、
自分の評価や信頼のために
やっているようなこともあります。
これが偽善でしょうか。
だけどやらないよりやったほうが
いいことではあるはずです。
咎められることはないはずです。
誰かが助かって、感謝を述べられれば
意味ある行いのはずです。
ただ、人間の打算的な気持ち悪さに
気づいてしまう。
それに見て見ぬふりをして今日も誰かの隣で
優しさを振る舞う・・・。
皆に、全てに、当てはまる「優しさ」は
本当の優しさではないのかもしれないですね。
思う相手と対話して、
願いをちゃんと聞かないと
優しさもエゴになってしまうのだと思います。
ぼくは”優しい人”なんていないと思う
だって”優しいこと”なら
どんな人でもたまにできる
『PPPPPP』の著者について
『星のエイリアンに努力賞を。』が第34回(2020年1月期)JUMP新世界漫画賞にて佳作・超新星賞を受賞。同作と『交差点珍道中』を『ジャンプGIGA』2020 SUMMERに掲載し、デビューを果たす。
2021年2号『週刊少年ジャンプ』に『ダダダダーン』を掲載。
2023年10月より『少年ジャンプ+』にて『対世界用魔法少女ばめ』を連載中。
『PPPPPP』の感想・まとめ
人に「ファンタジー」を見せ、
その幻覚に引き込むほどの
演奏ができるのがこの作品の天才たちです。
その描写や演奏者たちの心理描写が
よかったです!
もっと続いてほしい作品でした。
ポジティブでもネガティブでも
印象に残るセリフが多いです。
ジャンプ作品らしい勇気をもらえる
言葉も多いので、ぜひ読んでみてくださいね!
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